日本発達心理学会第35 回大会の開催にあたり、ご挨拶申し上げます。
立命館大学茨木キャンパスで開催された第34回大会は、ひさびさの対面開催でした。第32回・33回大会と、オンライン開催が続きました。遠方であっても参加しやすい、手が離せない仕事があっても合間を縫って参加できるなど、オンラインにはオンラインならではの良さがあることを、私たちは実感してきました。けれども、久しぶりの対面開催を経験し、私たちは直接向き合うことの重みも改めて実感したのではないでしょうか。ポスター発表の場でのやりとり、廊下での立ち話、休憩室での雑談。表情や息づかいも含め、身体性をともなった声の響き合いが、私たちを力づけます。というわけで、第35回大会も、対面での開催を基本とすることにしました。ただし、オンラインの機動性を生かし、海外からの招待講演者はオンラインによる参加となります。
本大会は、昨年度に続く大阪での開催です。大阪教育大学・京都教育大学・奈良教育大学の三教育大学が主催校となり、準備を進めています。三大学を合計すると約30名の本学会会員がおり、準備委員会も大所帯です。大会のテーマや大会企画は、オンライン会議での侃々諤々、喧々囂々の議論を経て、教員養成を主目的とする三大学の特徴を生かしたものとなりました。
大会のメインテーマは「発達をみる、発達からみる―保育・教育と多様性―」です。保育や教育などの場に深く関わりながら、その中で生きる子どもの発達を「みる」、あるいは発達という視点から、実践の営みを「みて」行くことを目指します。また、「みる」には「見る」だけでなく、「観る」「看る」「視る」など、さまざまな「みる」があります。多様な「みる」営みを通じて場の多様性とともに子ども達の発達の多様性を捉えること、それが本大会の目指すものです。大会企画も盛りだくさんです。一例として、特別鼎談(ディスカッション企画)をご紹介しましょう。「発達の当事者性と政策・実践―こどもまんなか社会の実現に向けて―」(仮)と題し、子ども自身がとらえる発達への思いや願いが、いかに政策や実践に反映されるのかを議論します。院内学級の子ども達やヤングケアラーなど、様々な状況にある子ども達に寄り添いつつ研究・実践を重ねてこられた方と、保育・教育政策の企画立案に深く関与している研究者にご登壇いただき、発達の当事者性と政策とを切り結ぶ議論ができたらと考えています。
会場の大阪国際交流センターは、大阪市内中心部の上町台地にあり、アクセスは良好です。近くには、串カツで有名な新世界、聖徳太子が建立した四天王寺、日本最古の鉄骨造りの城・大阪城もあります。活気に溢れ、少しキッチュでディープな大阪をお楽しみ下さい。
多くの会員の皆様のご参加を、大会委員一同、こころからお待ちしております。
2023年7月
日本発達心理学会第35回大会委員会委員長
高橋 登(大阪教育大学 総合教育系 教授)