日本発達心理学会の会員の皆様におかれましては,ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
日本発達心理学会の大会は,2020年3月に開催予定だった第31回大会から新たな歩みがはじまることになっていました。しかし,直前になって国から大規模イベントの中止・延期・縮小の要請があり,「大会は成立したものとするが,開催期間に会場には参集しない」という苦渋の決断をいたしました。
第32回大会は,すでに学会HPでお示ししたように,Webによるリモート大会となります。新型コロナウイルスの感染拡大は全世界で止まらず,日本でも再び感染者が急増してきています。多くの専門家は,1918年のスペイン風邪の経験にもとづいて,今年の秋から来年にかけて今回を上回る流行と被害を予想しています。そのような状況で,第32回大会は,学会理事会が大会委員会を組織して開催することといたしました。今後の状況の推移に依存しますが,次の第33回大会は東京学芸大学で大会委員会を組織して,会場を設定して開催することを予定しています。
発達心理学は,時代や世界の状況と常に深く関わっています。第31回大会のご案内(第1号通信)で,大会委員長であった故南徹弘先生がこの30年間の発達心理学の活動を振り返って書かれた次の文は正鵠を射ていると思います。「この30年の間に,発達心理学は,少子高齢化,子育てや虐待といった家庭,家族,親子や友人間の問題,引きこもり,不登校などの問題,さらにiPSとの関連性,IT化,ロボット工学など他分野との結びつきなど多岐にわたるかかわり,また日常生活においては経済学などとの結びつきなど,発達心理学と他の研究分野との新しい結びつきが広く深く変化し,それによる方法論の問題も新しく浮上してきました。言葉を変えるならば,発達心理学の日常化の深化と拡大,ということになるでしょうか。」
第32回大会はパンデミック下で開催されます。このご案内(第1号通信)の原稿を書いている間にも長引く梅雨の中で各地に被害が出ています。パンデミックも自然災害も,あらゆる世代の人々の社会経済的営みに決定的といえるほどの影響を及ぼします。例えば,貧困や経済格差の問題が一段と深刻化していますし,人と人のつながりや学び方を根本から変えつつあります。また,科学者の社会的責任の問題が先鋭化してきています。われわれ発達心理学者は,さまざまな角度から,「今,改めて,発達を考える」ことが必要です。そこで,異例ですが,第32回大会は第31回大会のテーマを引き継ぎ,表題に掲げたテーマを設定しました。
Webによる大会開催ということを知り,会員の皆さんは大会参加費がほとんどかからないと期待されたかもしれません。会場の経費がかかりませんので,例年より安く設定しますが,Web開催ならではの経費がかかります。大会委員会の手に負えないことが多くあり,大会運営に必要なシステムやその管理を外注することになります。ご理解くださるようお願いします。
はじめてのWeb開催です。大会委員会は手探りではありますが,Web開催のメリット(が何かを見きわめることも含め)を最大限に活かすべく準備を進めています。皆さんの積極的な参加を期待しています。
2020年7月
日本発達心理学会第32回大会委員長
氏家達夫(放送大学愛知学習センター所長)