大会委員長挨拶
皆様におかれましては,ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
日本発達心理学会第28回大会は,2017年3月25日(土)~27日(月)の3日間,広島大学を担当校として開催させていただくことになりました。会場は,アクセスの利便性を鑑み,また平和都市広島の持つさまざまな特性を皆様に体験していただきたく,広島市平和公園内の広島国際会議場および隣接するアステールプラザ,広島市文化交流会館といたしました。
本大会のテーマは,「社会と世代のこころをつなぐ発達心理学」です。IT技術やデジタル的思考が社会のさまざまな分野に浸透し,社会が急激に変容するに伴って,心の成長・発達にも多くの問題が生じています。本大会は,これらの現代社会の抱える問題をとらえ直し,社会,世代,学問等を,発達心理学の視点から「つなぐ」ことを問題提起したいと考えています。
大会企画としては,次のような海外からの招待講演やシンポジウムを予定しています。
海外からの招待講演では,アメリカ合衆国のAusten Riggs Center,Erikson研究所 前所長 Dr. M. Gerard Frommをお招きし,「ライフサイクルの『はめば歯車』とトラウマの世代継承―Eriksonの人生と仕事の省察―」について,ご講演いただきます。Austen Riggs Centerは,アイデンティティ論を提唱したE. H. Eriksonが長く研究と臨床活動に携わったことで有名で,アメリカでトップを誇る心理臨床施設・研究所です。Dr. M. G. Frommは,Eriksonから直接,指導を受けた経験をお持ちで,発達心理学・臨床心理学の第一線でご活躍中の研究者・心理臨床家です。
基調講演「21世紀のアイデンティティと世代継承性」では,Dr. Frommの招待講演と連携して, アイデンティティの視点から本大会のテーマを討議します。長年, ライフサイクル, アイデンティティ, 世代継承性研究に携わってこられたやまだようこ先生と岡本が講演させていただきます。
また,広島大学ダイバーシティ研究センターとの共催シンポジウムとして,「ダイバーシティを考える―研究と実践の可能性―」を企画しました。
大会委員会企画シンポジウムとしては,「虐待予防に発達心理学ができることは何か?」,「日本人青年のアイデンティティ発達はどこまで明らかになったか」,「認知発達研究における理論の役割を考える」,「ワーキングメモリ理論から発達障害へのアプローチの進展」,「歴史的トラウマの記憶と継承―戦争体験は次世代にどのように受けつがれたのか―」の5つを予定しております。5番目の企画は,本大会のテーマおよび広島での開催に因んで,戦争体験やトラウマの世代継承性について,新たな視点を見出すことができればと企画いたしました。本大会にて,認知心理学・発達心理学と心理臨床をつなぐ諸課題や世代継承性等,現代社会の問題を多角的に討議できれば幸いでございます。
3月下旬の広島は,桜も見ごろで暖かな美しい季節です。
大会委員一同,多くの皆様のご参加をお待ちしています。
2017年1月
日本発達心理学会第28回大会委員長
岡本 祐子