ー 学会案内 ー
補助タイプ: Aタイプ
企画タイトル: 子どもの「社会性」への包括的アプローチ
開催日時: 2006年6月25日(日) 14時00分~17時00分
開催場所: 筑波大学・附属大塚養護学校
参加者数: 35人
概要:
今回の例会では、①社会性を捉える観点についての提案を長崎氏から、②自己制御と要求行動の発達的関連性についての研究報告を鈴木氏から、③社会性発達を包括的にアセスメントし支援する観点を指定討論者の亀田氏から整理していただき、フロア全体での討議となった。
①の長崎氏からは、軽度発達障害児が社会性や社会的スキルの発達に困難を持ち、大きなストレスを抱えている現状がある中で、「社会性」とは何かについては研究者によって定義づけが違うこと、社会性の捉え方の変化について歴史的背景が述べられた。さらに福祉分野では拡がりつつあるICFモデル(WHO)では、「社会性」とは障害児・者自身が社会・文化に参加・継承し、新たな文化を創りあげてゆくことに重きているが、教育・心理の分野では未だ十分に認識されていないことが指摘された。社会性を新たに捉え直し、社会性を包括的にアセスメントし支援する方論の開発、社会性の階層性の検討において「自己の発達」と「関係の発達」の関係など、子どもの「社会性」への包括的アプローチに向けての観点について述べられた。
②の鈴木氏からは、社会的適応に困難を持つ子どもに対する研究、攻撃的な子ども・引っ込み思案な子どもの自己制御の問題として、自己制御の捉え方を自己抑制、自己主張を軸に4群に分類し、研究1では自己制御タイプの子供がどのような要求行動を行っているかを保育所在籍の5歳児24名を被験児として観察し分析した結果の報告、研究2における自己制御と要求判断(実験)では、状況要因を整理した上で、各自己制御タイプの子どもが何を手がかりに行動変化をしているのかを調べることを目的とした報告があった。自己抑制、自己主張が高いHH群は他者の反応に着目して反応を変化させていること、要求達成率が最も高いこと、自己抑制が高く自己主張が低い(引っ込み思案タイプ)LH群は他者の反応に着目して反応を変化させ、要求数、要求実行が少ないこと、今後は理由を探る必要があること等の考察が述べられた。フロアからは、自己制御の測度の項目やタイプ分類の妥当性についての指摘、研究2の認知課題のアニメーションによるものは現実の場面と乖離するのではないかなどさまざまな質問が投げかけられ活発な意見が飛び交った。指定討論の亀田氏からは、学校現場での学習の支援、社会性の支援の重要性を考えたときに、ノウハウを持ちつつある学習支援に比し、社会性の支援の困難さ、それに対する支援のしかたの現状等いくつかの指摘があった。フロア全体での積極的な意見交換がなされ、社会文化的要因との関連や発達を踏まえた他者との関連性等を検討していくことが課題として提起された。