ー 一般向け ー
日本発達心理学会では、研究成果を還元するため、一般公開のオンライン講座(シンポジウム)を行っています。今回は発達や学習の多様性という観点からインクルージョンについて考えていきます。インクルーシブ保育、インクルーシブ教育、発達障害などに関心のある皆さまのご参加をお待ちしています。
●日時:2025年3月22日(土)13:00~16:00
●会場:ウェビナー
●参加対象者:心理学に関心がある一般市民、諸学会会員、学生、大学院院生など、どなたでも参加出来ます。
●参加費:無料(事前登録が必要)。
●定員:500名(定員に達すると期限前に受付終了することがありますので、ご注意ください)
●参加申し込み(事前登録):以下のGoogle formから登録をお願いします。登録者には後ほどウェビナーに関する情報をお送りします。
Google form
●参加申し込み締め切り:2025年3月12日
●プログラム詳細(シンポジウム・話題提供者の詳細、スケジュール等は、以下のGoogle driveをご参照ください)
オンライン講座250322
★公開シンポジウムチラシPDF(ダウンロードできます)
<話題提供>
1.なぜ,通常学級は非包摂的なのだろうか:学級規範の視点から:赤木 和重(神戸大学)
2.自閉スペクトラム症の発達と学習からみる発達の多様性:米田 英嗣(青山学院大学)
3.子どもの多様な学びの姿を捉えるために-「学びの物語」によるアプローチ:吉川 和幸(国立特別支援教育総合研究所)
<指定討論>
1.多様な発達をとらえる観点:長澤 真史(関東学院大学)
2.発達を支援することの多様性:佐竹 真次(山形県立保健医療大学)
<全体討論>
<司会・企画主旨>長崎 勤(社会貢献委員会、実践女子大学)
【企画主旨】
国連の障害者権利委員会は2022年9月に日本が「長く続く特別支援教育により、障害児は分離され、通常の教育を受けにくくなっている」と指摘し、障害児を分離している現状の特別支援教育をやめるよう日本政府に強く要請した。日本の教育において、多様な個性や学習スタイルをもった子ども達や、様々な経済・社会・文化的な背景を持った子ども達が、真に社会的に包摂(インクルーシブ)されているかが、問われている。他方、現在、“多様性の尊重“は一般的な価値として広まっている。発達障害等の領域では、当事者研究やニューロダイバーシティ運動、ニューロマイノリティー論など、従来の多様さの捉え方への異議申し立てもみられる。多様性の尊重が叫ばれる中で、保育や教育の現場では、多様な子どもたちを受けとめ、支援実践を行っていくことの困難も語られる。
こういった社会的状況の中で、発達心理学はどうような役割が果たせるのであろうか?従来、発達心理学は、標準の発達がどのように起こるのかということが中心で、標準からの「逸脱」にはあまり学問的リソースを当ててこなかった。しかし、発達心理学のテキストを脇に置いて、家庭やクラスの現実の子どもたちの発達を見たときに、その多様性に驚かされる。そして、その多様性は脳神経科学的な多様性と、社会・文化的な多様性の相互作用(トランザクション)としての多様性だろう。
このような子どもたちの豊かで多様な発達を捉え、どう育て、支援してゆけるかを捉える科学となったとき、発達心理学もまた豊かなものとなるだろう。そのために発達心理学という学問のパラダイムをどのようにシフトしてゆけるかが、大きな課題といえる。
本シンポジウムでは、赤木和重氏からは、特別支援学校・特別支援学級在籍児の急増の背景と考えられる通常学級からの転籍データが示す通常教育の課題など、日本のインクルーシブの現状と課題について報告して頂く。次に米田英嗣氏から自閉スペクトラム症児の発達や学習の多様性の実態について報告して頂く。また、吉川和幸氏から、典型発達や多様な特徴をもつ子どもたちにおける、学習の多様な方向性や経路を想定するアプローチとして「学びの物語」の研究や実践を紹介して頂く。
指定討論者の長澤真史氏と佐竹真次氏からは、話題提供各氏の報告から、日本のインクルーシブ教育の課題を整理して頂き、多様な発達・学習を支えるという点について発達心理学がどのように貢献するか、また発達心理学自体の課題について、参加者と共に議論を深めたい。