日本発達心理学会
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ワークショップ・シンポジウム

2013年度国際ワークショップ及び公開講演会は盛会裡に終了いたしました。
多数のご参加、誠にありがとうございました。

2013年度国際ワークショップと公開講演会のご案内

委員長 福丸 由佳 (白梅学園大学)

 日本発達心理学会が毎年夏に開催している国際ワークショップですが、今年はスミス大学心理学科(Smith College, Northampton, Massachusetts)の教授として研究・教育に従事されているJill de Villiers先生とPeter de Villiers先生ご夫妻を講師にお迎えし、2013年8月23日(金)から25日(日)にかけて東京学芸大学を会場として開催いたします。また、国際 ワークショップ最終日の8月25日(日)午後には公開講演会を開催いたします。受入担当者は松井智子先生(東京学芸大学)と藤野 博先生(東京学芸大学)です。
 講演者のJill de Villiers先生は、心の理論と言語の発達的関係に関する研究の第一人者であり、その成果は米国の就学前児童およびマイノリティ児童の教育評価に応用 されるなどの高い評価を受けておられます。またPeter de Villiers先生は、言語と心の理論の関係において、特に自閉症スペクトラム、聴覚障がい児の発達を核とした研究が注目されております。こうしたお二 人の先生にご登壇いただく今回の国際ワークショップは、「心の理論における言語の役割」という重要な問題についての研究動向を知ることはもちろん、「定型 発達の子どもと自閉症、聴覚障がいを持った子ども」といった発達的・臨床的視点を取り入れた近年の研究成果に触れる絶好の研修機会となるでしょう。皆さま 奮ってご参加ください。(詳しい講師紹介はページ下部にございます。)

ポスターはコチラ(PDF 1.4MB)

〈国際ワークショップ〉 国際ワークショップ最終日(2013年8月25日[日])の午後にはJill de Villiers先生とPeter de Villiers先生の公開講演会が開催されます。こちらもぜひご参加ください。


〈公開講演会〉 ※通訳付き

*今回の公開講演会は、日本発達心理学会主催、日本臨床発達心理士会および(財)発達科学研究教育センターとの共催として行われます。
 また日本臨床発達心理士会の認めた資格更新講習会として、参加者は臨床発達心理士の資格更新のポイント(1ポイント)が取得できます。


〈国際ワークショップ プログラム〉
第1日 2013年8月23日(金)
8:30〜 受付
9:00〜 9:10 開会の挨拶
9:10〜12:10 セッション1 Dr. Jill de Villiers
「2種類の心の理論(潜在的・明示的)とは何か」
「信念の概念理解の前段階について」
13:00〜15:00 セッション2 Dr. Jill de Villiers
「補文構造の理解はどのように発達するのか」
15:30〜17:30  ショートプレゼンテーションT 数件(募集中です。下記ご参照ください)

第2日 2013年8月24日(土)
9:00〜12:00 セッション3 Dr. Peter de Villiers
「幼児期の実行機能と言語と心の理論について―大規模縦断発達調査からわかったこと」
「言語と聴覚障がいと心の理論について」
13:00〜15:00 セッション4 Dr. Jill de Villiers
「証拠性の理解と心の理論の関係」
15:30〜17:30 ショートプレゼンテーションU 数件(募集中です。下記ご参照ください)
19:00〜21:00 懇親会(場所未定)

第3日 2012年8月25日(日)
9:00〜11:00  セッション5 Dr. Jill de Villiers
「時制と真理の理解と心の理論の表象」
「文の再帰性と命題態度の理解について」
11:00 閉会


〈国際ワークショップ参加者によるショートプレゼンテーションの募集〉
 国際ワークショップの中で、参加者からのショートプレゼンテーションの時間を設けます。心の理論、言語、実行機能やそれらの関係などをテーマにした発表者の研究を話題にして、参加者全員で議論したいと思います。
 de Villiers先生から直接コメントをいただけるまたとない機会ですので、ふるってご応募ください。なお、一人あたりの持ち時間は30分(発表20分、質疑応答10分)です。
 希望者は、下記要領でお申し込みください。応募者多数の場合には、de Villiers先生に選んでいただくこともありますので、ご了承ください。

〈Jill de Villiers先生とPeter de Villiers先生の紹介〉
 Jill de Villiers先生は、米国マサチューセッツ州スミス大学心理学科の教授で、言語学、言語獲得、認知科学のコースを担当されています。就学前児の統語発 達を主なテーマとし、1974年にハーヴァード大学で実験心理学の博士号を取得されました。ハーヴァード大学ではRoger Brown教授の共同研究者でもあります。Peter de Villiers先生もスミス大学心理学科の教授で、聴覚障がい児の言語と読み書きの発達、自閉症スペクトラム障がい児の発達に関するコースなどを担当さ れています。Jill先生と同じく、1974年にハーヴァード大学で実験心理学の博士号を取得されました。
  de Villiersご夫妻の研究は統語の問題を中心に言語発達に関する広範囲にわたるものですが、1990年代以降の業績としてとくに注目されるのは、言語 と心の理論の関係についての諸研究です。それは補文をもつ統語構造を処理できる力が誤信念の理解に関係するという斬新な仮説に基づいています。言語と心の 理論の関係については、「信じる」「欲する」など心的動詞の理解との関係が検討されてきましたが、そこに統語論の視点から切り込んだのです。
  誤信念課題は「サリーはビー玉がカゴの中に入っていると信じている」と表現できます。これは「Aは<XはYである>ことを信じている」という形式をもちま すが、<XはYである>という命題文が「Aは〜を信じる」という文の中に埋め込まれ「信じる」という動詞の対象となっています。信念の対象となるメタ表象 の部分は語(モノ)ではなく文(コト)で表現されるべきであり、その文すなわち命題は真でも偽でもありえる、といった視点から問題を照らし直したわけで す。偽の命題を補文として含む文を理解できることが誤信念理解のキーポイントになるという考え方です。
  これはつまり、心の理論と言語の関係についての議論の焦点を意味論から統語論に転換させたといえるのであり、そこにde Villiers先生の研究の革新性がありました。また、心の理論が言語獲得の前提になるという方向から、言語が心の理論の獲得の前提になるという方向に 議論をシフトさせたともいえるかもしれません。
  そして、de Villiersご夫妻は自閉症や聴覚障がいの子どもたちを対象とした研究も多数なさっています。自閉症だけでなく聴覚障がいでも心の理論の獲得に遅れが 生じることが明らかになっていますが、それらのいずれの障がいにおいても、補文をもつ文を操作できる力が高まると心の理論の獲得が促されることを先生の一 連の研究は示唆しています。
  自閉症の人たちは直観的に解くことが難しい心の理論の課題を言語と推論を通して代替的に解決できることが指摘されていますが、これは言語力によって社会性 の問題を補える可能性を示すものです。そしてde Villiersご夫妻の研究は、そうした知見の根拠となる理論を提供するものといえます。そのような点で、高度に理論的であるとともに臨床への示唆を含 む実践に寄与する可能性の多い研究でもあります。
  ここまで紹介文を書いてきて読み返してみると、de Villiersご夫妻の研究の深さ、豊かさ、インパクトを十分に伝えきれていないもどかしさを感じます。しかし簡単に紹介できなくて当然、と開き直るこ とにしましょう。なぜなら、「Aは<XはYである>と信じている」という構造をもつ文と心的状態の理解にまつわる議論は「命題的態度」という主題のもと に、RussellやWittgensteinなどの巨匠と彼らに続く多くの哲学者たちが今日に至るまで考え抜いてきた一大問題でもあるのですから。
  そして、そのような奥深い問題であるからこそ、3日間にわたる国際ワークショップで時間をかけてじっくり考えてゆく価値のあるテーマといえるのではないで しょうか。人の心を理解することと言葉との本質的な関係性についての、典型発達の子どもたちや自閉症や聴覚障がいなど特徴ある発達をしている子どもたちを 対象とするこれまでの研究の流れや最新の知見をde Villiers先生ご夫妻から教えていただくとともに、基礎的・臨床的な議論を様々な側面から深められる時間を皆様とともに持てることを楽しみにしてお ります。
  国際ワークショップにも公開講演会にも通訳がつきますので、英語はちょっと・・・という方も安心してご参加ください。では、8月に学芸大でお待ちしています!


〈文献 Readings for Workshop in Tokyo〉
事前に読んでおくことをお奨めします(★印を付した文献は、今回の国際ワークショップの内容とも関連性が高く、入手が比較的容易であるという観点から、ご参考までに選ばせていただいたものです)。

de Villiers, P. (2005). The role of language in theory of mind development: What deaf children tell us. In J. Astington & J. Baird (Eds.), Why Language Matters for Theory of Mind. Oxford University Press.

★Schick, B., de Villiers, P., de Villiers, J., & Hoffmeister, R. (2007). Language and theory of mind: A study of deaf children. Child Development, 78, 376-396.

Low, J. (2010). Preschoolers implicit and explicit false-belief understanding: Relations with complex syntactical mastery. Child Development, 81 (2), 597-615.

Farrant, B., Mayberry, M., & Fletcher, J. (2012). Language, cognitive flexibility, and explicit false belief understanding: Longitudinal analysis in typical development and specific language impairment. Child Development, 83 (1), 223-235.

★de Villiers, J.G. (2007) The interface of language and theory of mind. Lingua. 117 (11)1858-1878.

de Villiers, J.G. & de Villiers, P.A. (2009) Complements enable representation of the contents of false belief: evolution of a theory. In S. Foster-Cohen (ed) Language Acquisition. Palgrave, Macmillan.

de Villiers, J.G. , Garfield, J., Gernet Girard, H., Roeper, T. & Speas, P. (2009) Evidentials in Tibetan: Acquisition, semantics and cognitive development. In Fitneva, S. & Matsui, T. (eds) Evidentiality: a window into language and cognitive development. Special Issue: New directions for adolescent and child development. 125, 29-48.