日本発達心理学会

理事長挨拶

第3代理事長(第4期-5期)
柏木 惠子

発達心理学は、乳幼児から青年、成人さらに高齢期にまでわたる、人間の全生涯の心と行動の発達過程について研究する学問です。この研究領域は、近年の社会変動のなかで子どもから高齢者すべての人々の教育や障害、臨床的問題さらに福祉と深く結びついているため、広く関心を集めています。また、扱う問題の広さから、心理学者のみならず医学、教育学、社会学、文化人類学、歴史学などの研究、さらに保育、教育、病院、施設など、人間の発達や養育に関わる実践家との交流や協力も必須で、実際、狭い心理学を超えた研究と実践の活動が展開されているところです。
日本発達心理学会は、このような幅広い研究と実践とを一層推進することを目指して設立されました。そのきっかけは、1987年夏、国際行動発達学会(ISSBD)の大会が東京で開催され、世界中から1000人を超える研究者が集まったことにあります。その時、ボランティアとして働いた若い研究者たちが、既存の学会にはない幅広い発達研究の交流の場としての学会を日本にぜひと願い、3年余り熱心に準備して発足しました。
以来10年。若い学会です。会員も20代、30代が多数。役員も若い。それだけに、会の組織や活動にこれまでの学会にない新しい試みを次々と展開し、着実に研究の交流と協力が広がりつつあります。500人余で始まった学会は現在2200人と、心理学会のなかでも大きく活発な学会となりました。しかし、数が増えたことで研究の交流が硬直化しないように、学会設立のときの発想を大事に、さらに会員からの多様な発想と新鮮な活力とを生かしたものとしたいと、切に願っています。
毎年3月末に大会が開催されますが、そこでは会員が自主的に企画・提案した自主シンポジウムやテーマ別懇談会を主流としています。また、掲示(ポスター)による研究発表会場では、発表者を囲んで質疑討論が熱心に繰り広げられています。会員の要望の強い方法論や最新のトピックスについての講習会・討論会も、大会時に行われています。大会には、毎年1000人を超える参加者があり、大変活気のある3日間です。
学術雑誌「発達心理学研究」を年3回発行し、幅広い方法と視野をもった発達研究の成果が発表されています。また年に数回、ニューズレターを発行していますが、そこにはテーマ別の研究部会や地区別部会が主催する研究会や講演会の公示や報告、学会誌や学会運営への意見や注文、研究の動機や実際の裏話、外国の発達研究や留学経験などなど、会員の研究や実践のいきいきとした動向が盛られています。  
  本学会は、人間の発達に関心をもつ人すべてに開かれています。会員になるには、学歴や業績も研究職であることも問いません。会員には、小中高校、幼稚園/保育所の先生方、養護・高齢者施設などの職員の方々も少なくありません。子ども、おとな、高齢者の心の発達や成長・発達、さらに人間の幸福な人生と福祉に研究関心をもっている方々、その実践の場にいる方々のご参加を歓迎いたします。